議員各位におかれましては、御多忙中にもかかわりませず、令和6年6月定例会議に御参集賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、去る5月19日告示の小松島市長選挙におきまして、私は、市民の皆様からの厚い御支援と各方面からの力強い御推薦を賜る中、無投票により、引き続き、小松島市政のかじ取りを担わせていただくこととなりました。
市長の職責の重さ、市政運営の難しさは、この4年間で痛切に実感したところでありますが、人口減少がますます加速するこの時代、数十年先も自治体として持続できるか否かの岐路に立つ「ふるさと小松島」を、心の底より憂慮する私にとっては、立ち止まることなく、挑戦を続けたいという思いがますます強くなりました。このたび再選をいただいたことは光栄の至りである一方、ようやく動き始めた新しい小松島市、この動きを今度はさらに上のステージに押し上げなければならない。その使命を前に、あらためてこの身を引き締めているところであります。
乗り越えなければならない山は数多くありますが、それら一つひとつに全力で取り組み、乗り越えた先に、未来につながる、元気で新しい小松島が待っているはずであります。新たな任期も、1期目以上の情熱と使命感、スピード感をもって、全身全霊で職務に当たってまいる所存でありますので、議員各位、そして、市民の皆様におかれましては、引き続き、市政運営に対し御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
さて、この市役所庁舎の玄関を入りますと、正面に「人口と世帯」と表した1枚の看板が設置されております。毎月、担当課の職員が、月初めの住民基本台帳人口と世帯数を集計し、数字のプレートをかけ替えているものでありますが、私は、月の初めに登庁した際、必ずこの数字を確認するようにしています。いつ頃設置されたものか、定かではありませんが、古びたその看板にかつて掲げられていたであろう4万数千人という数字は、今月、ついに3万5千を割り込んでしまいました。
近年、「静かなる有事」という言葉が、各方面で使われています。「有事」とは、一般に戦争や大規模な自然災害など、非常の事態が起こることを指す言葉でありますが、今、わが国、あるいは各地の自治体で起こっている、この想定をはるかに上回る人口減少は、直ちに人の生死に関わるものではないものの、国や自治体の存続に確実に関わる、まさに「有事」であります。漫然とした自治体運営が許される時代では、もはやありません。人口が3万5千人を割り込んでしまった今、本市も、最大限の危機感を、役所内だけでなく関係団体等の皆様とも共有し、知恵と努力をさらに尽くして、この「有事」に立ち向かっていく必要があります。
しかし、私は、この小松島の未来を、決して悲観しているわけではありません。むしろ、本市の潜在的な価値を引き出すことで、小松島の未来は明るいものになると確信いたしております。日峰山の山頂から見渡しますと、小松島湾を中央に抱く、穏やかで美しい小松島の風景が広がっています。豊かな自然は、本市の第一次産業を育み、人々に癒しと安らぎをもたらしてくれています。地理的には県都・徳島市に隣接し、四国横断自動車道の建設も着実に進む中、市民生活、経済、文化などの面でも、本市には、他の自治体にはない、高い将来性があります。
小松島の明るい未来は、まだ間に合う位置にあります。大事な、本当に大事な次の4年間、将来を見据え、本市が積極的に推し進める主な取り組み等につきまして、以下、申し述べます。
はじめに、あらゆる世代の方々が自分らしく生き生きと暮らせるまちの実現に向けてであります。
人はみな、生活や社会の中で、ありたい自分を実現したいと願っています。私は、様々な事業を組み合わせることによって、若者から御高齢の方まで、すべての世代の方々の暮らしを豊かで発展的なものにしていきたいと考えております。
そのための取り組みの一つとしまして、人々が集まり、自然と笑顔になる場所や機会を創出してまいります。
ハード事業では、小松島ステーションパークニホンフラッシュたぬき広場と市立図書館とを一体的に整備し、木漏れ日のアウトドア・テラスで読書などを楽しむことができる、癒しと憩いの空間を創出します。一度訪れた人が何度も来たくなる、魅力あふれる施設を目指し、本港地区への人の流れを生み出してまいります。
人々の期待や喜びが集う、心躍る機会の創出につきましては、これまでも、伝統ある「小松島港まつり」に続く新たなイベントとして、「小松島逆風ハーフマラソン大会」や「こまつしま秋の阿波踊り」、「中華そば祭り in こまつしま」などを開催し、市内外の多くの方々に御好評をいただいてまいりました。今後におきましても、本市の既存文化やロケーションと、新しい価値とを融合させた企画など、多くの方々が集い、ともに笑顔になる機会を創り出してまいります。
市民の皆様の暮らしを豊かで前向きなものにしていく上で大切な要素の一つとなる「健康」に関しましては、より重い病気の原因ともなる糖尿病や、日本社会全体の課題となっている認知症の予防に積極的に取り組むなど、市民の皆様の健康寿命の延伸を図ってまいります。
また、前段申し上げました「小松島逆風ハーフマラソン大会」も、単に交流人口の増加やにぎわいづくりのみを目的としたイベントではなく、市民の方々にスポーツの楽しさを通じて、継続的・主体的に健康づくりを行っていただくこともねらいとしております。疾病予防というとどことなく重苦しいイメージを抱かれがちでありますが、年代や体の状態にかかわらず、自然と楽しみながら取り組むことができる健康づくり事業を今後も展開し、市民の皆様の健康レベルの向上につなげてまいります。
次に、子育てしやすいまちの実現に向けてであります。
人が住む場所を定めるタイミングの最たるものは、結婚や出産であるとされており、この時期にある方々を、本市に引き留め、また、本市に呼び込むことは、自治体としての持続可能性を考えるとき、核心的な要素となります。そのための施策の一つとして、本市は、令和4年度から、「小松島市子育て世代応援プロジェクト」と銘打ち、保育や医療等にかかる子育て世代の方々の負担の軽減や、教育環境の充実、親子で安心して楽しめる空間づくりなどに取り組んでおります。今後は、これらの取り組みを引き続き推し進めつつ、取り組みの幅をさらに広げ、子育て中の方々にとって働きやすい就労機会の創出や、小松島に住みながら都市部にある企業で働けるといった、新しい働き方の発信など、子育て世代の「職」に焦点を当てた施策も推進してまいります。
結婚・出産・子育て期にある方々には、経済的にも、メンタル的にも大きな負担がかかっております。その方々を支えることは、このまちの未来を支えることであります。本市は、引き続き、子育てしやすいまちの実現を、市政の最重要課題の一つととらえ、こうした方々の実情にフィットする、思いやりのある施策を打ち出してまいります。
そして、子どもたちの成長にとって非常に大切な学校教育環境の充実にも、積極的に取り組んでまいります。
人口減少、気候変動、頻発化する自然災害、国際秩序の変化・・・。これからの子どもたちは、私たち今の大人よりも、さらに厳しい時代を生き抜かなければなりません。私たち大人がすべきことは、今できる努力をやり尽くし、未来の負担をできる限り小さくすること、そして、子どもたちの「新しい時代を生きる力」を育むことであります。多様な価値観を理解し、場面に応じて柔軟に対応する力を養うためには、多くの友達や教員とともに学び、生活することが重要であります。こうした理念の下、本市は、保護者や地域の方々等、関係者の皆様の御理解を賜りながら、令和4年2月に「小松島市立学校再編実施計画」を策定し、現在、少子化社会に対応しうる活力ある学校環境を確保するべく、小学校の再編に全力で取り組んでおります。
このうち、(仮称)新小松島小学校の施設整備につきましては、このたび、設計・建設・工事監理・維持管理を一体的に実施する優先交渉権者を、公募型プロポーザル方式により選定いたしました。今後は、相手方と正式に基本協定を締結した上で、「つながり」を重視した施設イメージの具体化を進め、令和9年度開校を目指して、適切に事業を推進してまいります。また、その他の小学校につきましても、児童数の減少がさらに加速しております。前段申し上げましたように、子どもたちの生きる力を育む、活力ある学校環境を確保することを第一に考え、学校再編に取り組んでまいります。
次に、市民の皆様の安全と安心に資する取り組みの推進についてであります。
市民の皆様の命と財産を守りぬくとの揺るぎない決意の下、防災対策については、引き続き、強力に推し進めてまいります。
南海トラフ巨大地震による最大クラスの津波の発生を想定した上で、本市はこれまで、民間の方々や関係団体の御協力もいただき、津波避難困難者解消に向けた取り組みを進めてまいりました。三方を海に囲まれ、平坦な地形の和田島北部地区におきましては、高層建築物も少なく、地域特性上の課題を抱えておりましたが、現在、約600人が避難できる津波避難施設の整備に向け、鋭意、取り組みを進めております。これらの事業をできる限り早期に完了させ、市内の津波避難困難者ゼロを実現してまいります。
また、今年1月の能登半島地震では、古い木造家屋が数多く倒壊しました。亡くなられた方々の約8割は、家屋の倒壊が原因であったと言われております。本市におきましても、特に御高齢の方々から、耐震改修の重要性は理解しつつも、資金の問題からなかなか改修に踏み切れないというお話をよくお聞きします。そうした方々の後押しとなるよう、耐震改修にかかる補助金を拡充するとともに、より活用しやすい防災・減災事業もあわせて展開してまいります。
市民の皆様の安全・安心を確保するための取り組みに、終わりはありません。今後も、最新の知見や情報を取り入れながら、効果的な施策を打ち出し、市民の皆様の命と財産を守りぬいてまいります。
市民生活の重要なライフラインである一般廃棄物中間処理施設は、地域と共生する未来志向の施設として、遅れることなく整備してまいります。
御承知のとおり、本市では、市内で日々約30トン発生する可燃ごみ等の中間処理を、稼働開始から40年が経過した施設に頼るという運営が続いております。徳島市など周辺4市町で進めていた広域処理に向けた努力が、一昨年の11月に、あのようなかたちで水泡に帰した後、本市は、市民生活に影響が及ぶことのないよう、速やかに舵を切り直し、置かれた状況の中で最善のあり方を検討してまいりました。これまで、施設の安全性や周辺環境への配慮、脱炭素社会への貢献等、持続可能なごみ処理施設の姿を追求する中で、可燃ごみの処理方式や最終候補地を選定するところまでこぎつけるとともに、本定例会議に関係議案を提出させていただいておりますように、施設整備やその後の管理を勝浦町と共同処理していく枠組みにつきましても、6年後の令和12年度の稼働開始を目指して、歩みを進めております。
今年4月、徳島市の遠藤市長から、あらためて広域整備に向けた申し出をいただきましたが、もうすでに6年の遅れが生じている本市としましては、現施設のさらなる延命が必要となる、再度の舵の切り直しには、慎重にならざるを得ません。議会、そして市民の皆様の御理解をいただきながら、未来に誇れる施設を1日も早く稼働できるよう、取り組みを進めてまいります。
次に、財源の確保に向けた積極的な取り組みについてであります。
ふるさと納税は、地方にとって、活性化に向けた反転攻勢の足がかりとなるものであり、さらなる展開を図ってまいります。
小松島市ふるさと応援寄附金、いわゆるふるさと納税につきまして、本市はこれまでも、魅力あふれる数々の特産品など、返礼品の拡充を図ってきたほか、様々な場面をとらえての積極的なPR活動、ポータルサイトの拡大等により、寄附件数、寄附金額の増加に力を注いでまいりました。これらの努力が実を結び、私の就任前の令和元年度には約2千500万円であった寄附金額は、令和5年度、10倍以上となる2億6千万円あまりにまで伸ばすことができました。
ふるさと納税は、小さな自治体であっても、知恵と発想次第で、全国にその魅力を発信し、日本中から応援を集めることのできる、夢のある制度であります。今や1兆円規模とも言われるその市場をめぐって、自治体間の競争は激しさを増しております。本市としましては、市内の農業・漁業関係者の方々、事業者の方々等と一体となって、返礼品のさらなる拡充に取り組んでいくとともに、新たに、都会にはない本市ならではの魅力を、ここ小松島で直に楽しんでいただく体験型の返礼品についても、開発していく考えであります。
ふるさと納税は、流動性のある財源には違いありませんが、真に魅力ある返礼品を戦略的に展開することで、一定の水準を保てるようにし、その時々の市政の課題に有効に活用していくことで、市民の皆様に広く還元してまいります。
さて、こうして、ふるさと納税の実績を伸ばしてこられた一方で、本市の行財政運営を取り巻く環境は、近年、加速度的に厳しさを増しております。ロシアによるウクライナ侵攻を背景とした国際的な原材料価格の上昇や、歴史的水準にある円安等は、あらゆるモノの価格を高騰させ、国内の労働人口の減少は、企業等における人件費の高騰を通して、工事請負費や委託料等の上昇につながっております。中でも、財政負担への影響が大きい建設資材価格につきましては、この3年あまりでおよそ3割上昇しております。
あらゆるものの価格の高騰は、市民の方々の家計や民間企業の経営と同じように、本市の行財政にも深刻な打撃を与えております。加えまして、広域で行うこととしていた一般廃棄物中間処理施設の整備手法が見直しを余儀なくされたことも、本市の財政見通しに大きな影響を及ぼしております。
こうした財政状況の中、なんとか活路を見いだすべく、国や県の支出金等、財源の確保にも全庁的に取り組んでおります。私自身も、先月28日から29日にかけまして、文部科学省、厚生労働省、国土交通省、防衛省及び財務省を訪問し、本市の置かれた実情や懸命の取り組み等を訴えつつ、財源の確保や支援策の拡充等を強く要望してまいりました。昨年11月にも訪問した文部科学省のほか、厚生労働省や財務省に市町村長が直接要望活動を行うことは異例のことのようでありますが、小松島の未来を拓くための施策をなんとしてでも前に進めたい。その一心で、本市の取り組みに対する国の支援をお願いしてきたところであります。
負担ばかりが先行して増大する現下の状況の中、くらしや会社を守るために、市民の方々が家計をやりくりし、事業者の方々が事業の見直しをされているように、本市も、自治体としての機能を維持し、市民サービスの水準を安定的に確保するために、この先も、あらゆる努力を重ねて、財政負担増大の影響を最小限に食い止めていかなければなりません。
一方、今年4月に民間の有識者グループ「人口戦略会議」が公表した分析結果では、全国の自治体の約4割が、将来、人口が急減し、最終的に消滅する可能性のある「消滅可能性自治体」と指摘されました。本市も、その4割の自治体の中の一つであります。自分たちのまちの未来を、危機感と責任感をもって見据え、時宜と住民ニーズに適う施策を持続的かつ安定的に打ち出せない自治体は淘汰される時代であります。前段申し上げた財政負担増大への対応は当然必要でありますが、かと言って、本市の人口を維持するための事業を今、おざなりにすることは決して許されません。「財政か人口か」の議論ではなく、「財政も人口も」の市政運営が求められているわけであります。
そうした認識に立ち、本市は、市民の皆様の安全・安心に資する防災減災対策や、時間的にも猶予のない一般廃棄物中間処理施設整備事業、子どもたちの充実した教育環境を整備するための(仮称)新小松島小学校施設整備事業など、必要性・緊急性の高い施策は確実に推し進めながら、屋内プールを備えた複合施設の整備や、日峯大神子広域公園(脇谷地区)整備事業などについては、計画規模の見直し等も含め、情勢に応じた最適化を図りながら、前に進めていく必要があると認識いたしております。
大前提として財源の確保に全力を挙げつつ、事業の前進と、財政の持続可能性維持とを両立していくことは至難であります。そして、今後求められるそうした政策判断が適切であるかどうかも、究極的には10年後、20年後の評価を待たなければならないのかもしれません。しかし、いつのときも、最善の判断を行えるのは、最大限の努力をした者のみであります。非常に厳しい局面ではありますが、市役所が一丸となって知恵を絞り、持てる力を尽くす中で、持続可能な財政運営と、人口減少抑止につながる魅力あふれるまちづくり、その両方を進めてまいる所存であります。
先の市長選挙に臨むにあたり、私は、誰もがワクワクする小松島を創り上げる。このことをスローガンに掲げました。かつて小松島市は、四国と関西を結ぶ玄関口として多くの方々が行き交い、活気と、人々を引き付ける魅力に満ちたまちでありました。往時を知る世代の一人として、そして、小松島をこよなく愛する市民の一人として、このふるさとにあのときのような活気と魅力をよみがえらせたいとの思いが、このスローガンの源になっております。
時代は移り変わり、私たちの暮らしも、小松島の街並みも、当時とは大きく変わりましたが、当時の、温かくも活気のある小松島の文化は、今もこのまちの根底に息づいております。この素晴らしいまち・小松島が、将来にわたって誇りと主体性をもって持続していけるよう、託していただいたこの4年間、粉骨砕身の覚悟と気概を持って市政運営に当たってまいりますので、議員各位、そして、市民の皆様におかれましては、御理解、御協力を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。
それでは、本定例会議に提出いたしました議案及び報告案件のうち、主なものにつきまして説明いたします。
議案第44号の令和6年度小松島市一般会計補正予算(第3号)につきましては、市民生活への影響がないよう、ハード・ソフト両面にわたり適切な予算措置を講じた当初予算以降に、事業の進捗に合わせ必要となった経費について、普通建設事業を中心に所要の補正を行っております。具体的には、昨年度末に設計業務が完了した南小松島駅のトイレ建設工事のほか、国庫支出金の事業費が確定したことに伴う道路や橋梁の整備事業に要する費用に所要の補正を行っております。加えまして、年始の能登半島地震を受け、本市といたしましても、より一層防災対策に注力し、市民の皆様の安全を確保する必要性を痛感しましたことから、新たに防災企画監を任用することとしたほか、利便性を向上させたこととも相まって、市民の皆様から申請が増加している耐震改修支援補助金などに所要の補正をいたしております。これらに対する財源としましては、国庫支出金や県支出金を活用するほか、交付税措置のある有利な地方債を発行するなどして対応いたしておりますが、それらの特定財源以外にかかる一般財源については、財政調整基金からの繰入金にて対応いたしております。
これらによりまして、補正総額は4億6千125万7千円となり、当初からの累計は歳入歳出とも170億1千253万1千円となっております。
なお、議案第43号の令和6年度小松島市一般会計補正予算(第2号)につきましては、物価高騰の中の国の経済対策として実施する「定額減税補足給付金給付事業」等にかかる補正予算となっておりまして、対象となる方々に少しでも早く支給が行えるよう、本日、開会日における先議をお願い申し上げる次第であります。
その他の議案及び報告案件につきましては、お手元の議案書等に記載のとおりでありますので、御覧いただきますようお願い申し上げます。
よろしく御審議の上、原案どおり御賛同賜りますようお願い申し上げます。